株式会社 京王プラザホテル-研修導入

人事部人事開発支配人 城所明未氏インタビュー

城所明未

■「生産性向上」のために研修を設けたきっかけは?

今はとにかく「時間管理」に厳しくなった時代です。仕事を開始した時間、終わった時間、職場の建物に入った時間、出た時間……私たちの会社でもそれを1週間ごとに集計して厳しく管理するようになりました。

 

そもそも今、時間管理に関しては、ホテル業に限らず厳しくみられる傾向があります。

 

2008年に、長時間残業にもかかわらず残業代が支払われない「名ばかり」店長の問題が注目されて以来、特に厳しくなったように思われます。

 

私たち京王グループはサービス業という生活関連産業を持っているグループです。普通に仕事をしていたらどうしても残業になりがちだということで、グループ全体で「長時間労働対策」の取り組みが強くなされています。

 

でも、単純に「労働時間を減らせ」といっても、現実的には、仕事の量そのものを減らさないかぎりそれはできません。社長自ら賞与支給式や年賀式、キックオフ会議など、全社に向けて話をするタイミングで「仕事を減らしてださい」ということはいっているのですが、それに対してスタッフ一人ひとりが個々に考えるのは大変なことです。そこで「生産性向上研修」というものを設けたのです。

 

 

■そのなかであえて「行動科学マネジメント」の研修を選んだ理由は何ですか?

 

私たちのホテルの多くのスタッフは、仕事柄、日常的にPCを使っての仕事はしていません。そこで、「PCに依存しないで行える生産性向上のアプローチはないだろうか?」という視点でいろいろな手法を探していたところ、行動科学マネジメントを見つけました。

 

もちろん、一般的な業務集積を行うようなマネジメント手法も当たってみました。「業務集積をしながら少しずつ改善をしていく」といったものです。

 

しかしその業務集積の作業には、だいたいPCが必要になります。そもそも普段PC作業をしていないし、だからといって文字で書き出しの作業をしていたら、それだけ仕事が増えてしまうわけです。そこに負荷をかけてしまうと、生産性向上どころか「残業しなければ追いつかない」ということになってしまいますからね。本末転倒です。

 

だからまずはPCを使うことなく、「考えたことがすぐに実行できるようなマネジメント手法」ということで、行動科学マネジメントに取り組んでみることにしました。

 

「研修で話し合ったことを、少しのことでもいいからすぐに動き出せる」…行動科学マネジメントでそんなことが可能になるのではないかと思ったのです。

 

 

■生産性向上に関して具体的に「目指していること」とは何でしょうか?

 

時短、すなわち「無駄なこと、やらなくていいことをやらない」ということですね。

 

そもそも職場では育児中の人の勤務も増えていて、そういう人は通常のマイナス2時間の勤務となります。ただ、職場ではこれまで「フルタイムで働くことができて、さらに場合によっては残業もできる」という人を前提に仕事を組み立ててきたわけです。

 

でも今は、こうした「時短勤務の人」も入れて、以前と同じか、むしろ少ない人数で仕事をすることが求められます。60歳以上のシニアの人や障がい者採用の人もいる。昔と違っていろいろな立場の人が働いていて、「フルタイムで働けて残業もできる」という人はものすごく減っているんです。

 

ただ、働く人が多様化するというのは、悪いことではありません。私たちのお客様にはいろいろな立場の方がいらっしゃり、私たちも「全方位外交」でいろいろな立場の方のことをわかったほうがいい。いろいろな立場のお客様をお迎えするには、こちらもいろいろな立場であったほうがいい。京王プラザホテルはこれまでに100カ国以上のお客様をお迎えしてきました。国籍年齢性別問わず幅広い方にご利用いただける、「生き生きとしたヒューマンスペース=プラザ」であることを企業理念としています。近年外国人のスタッフも増えています。それに合うようにやり方も変えていきましょう、ということです。

 

ホテルに限らず、今は世の中のすべてが多様化された時代ですので、昔の常識ではいられない。だから昔みたいに「残業が普通」とも考えるべきではないのでしょう。「国が決めたから仕方なく」ということではなく、時代に合わせて、決められた時間の中で働く人がそれぞれ活躍できるようにしなくてはいけない。だから無駄なことを削れるしくみが大事なのです。

 

 

■生産性向上に際してホテル業ならではの問題はありますか?

 

私たちホテル業は、普通に仕事をしていると仕事が「積み上がって」しまうんです。「こんなことがお客様に喜ばれた」ということがあれば、「ならばこういうご案内もしよう」「こういうご提案もしよう」と、作業が増えていくのです。たとえば私はかつて宿泊予約の部署にいたのですが、「お客様から喜ばれるように、クレームが起こらないように」ということを重視すると、予約対応の電話もとても長くなってしまうんですよ。

 

「よかれと思っていろいろやる」ということは、反面、仕事を増やしていくことにもなるわけです。だからそのストライクゾーン、適正な範囲をホテルとしてどう捉えるか?を考える必要があります。

ホテルスタッフはどうしても「お客様にとって良いこと」をやりたいものなのです。働いている現場で、すぐに目の前のお客様からのフィードバックが得られるわけですからね。お客様にお喜びいただけることが嬉しいという人が揃っているのです。

 

そこで、今シフトしているのは「お客様に対する部分は厚めにしましょう。そのかわり裏の作業や事務的な部分は効率化しましょう」ということです。そうやって業務を切り分けないと、ただいたずらに仕事時間を増やしてしまうだけです。これまでの慣例でやっていたことも見直してみる。そういうきっかけを行動科学マネジメントの研修で与えていただきましたね。

 

また、クレームが発生すると本当に時間を使うことになります。事実確認の調査から始めなければならないので…。行動科学マネジメントの「チェックリストの活用」などは、そうしたクレーム対応にも応用できると考えています。

 

 

■行動科学マネジメントの研修後に社員の方から出た具体的な施策はありますか?

 

たとえば、ホテルにはベルワゴンというお荷物を載せるカートがあります。昼間はベルマンがホテル内で使っています。これはロビーサービスという部署が管理しているのですが、管理のために昔からの慣習で、毎晩毎晩、ホテル内のすべてのベルワゴン60台の台数を数えていたんです。しかし見直してみれば、それをホテル外に持ち出すことなどはないはず。だから「毎晩」行っていた台数チェックを「週1回の作業」に短縮させました。これにより一日15分~20分の効率化になりました。お客様に対することはしっかりやろう。そうではないところは時間を削ろう、という例ですね。

 

また、レストラン部門からの(研修後の)報告では、お客様に出すナプキンを折る作業を繁忙期には外注した、という例がありました。通常はホテルのスタッフがナプキンを折っていますが、見直してみれば仕上がりは同じ。お客様にとっては「綺麗なナプキンを使いたい」というのが望みですから、そこでたとえば「(外注では)心がこもっていない」というのは、こちら側の事情なわけですからね。

 

そして、働く人が「機嫌良く過ごす」ということも、私たちにとっては実はとても大事なことなんです。接客の際に「その日の気分」で接客してはいけないわけです。では、どうすればいいか? 行動科学で上司が「褒める」「認める」ということをしてくれれば、部下も機嫌良く仕事ができるのです。上司が不機嫌な表情では、部下も気分良く仕事ができませんし、またトラブルがあった際の報告もしづらいものです。でもそれでは大きな問題に発展する可能性もあります。何でも報告できる環境をつくる上でも、上司の振る舞いは重要です。そこで上司の立場にいる人も、自分の「表情」や「部下にかける言葉などをチェック、計測するという取り組みを始めた人がいます。これは行動科学マネジメントの影響ですね。

 

 

■今後あらたに考えている取り組みなどがあれば教えてください。

 

「教える時間を短くしたい」というのも大きなテーマです。

 

世代によっても、国の違いによっても、それぞれの常識は違いますので、行動科学マネジメントでいうように「教え方」を工夫しなければならないと思っています。

 

「誰もが同じように行動できる」という、行動科学マネジメントでいう「再現性」を求めた結果、私が今考えているのは、「動画」の活用です。行動を分解して伝える際にも、言葉ではなく「百聞は一見にしかず」というのが有効ではないかと思います。

 

たとえば客室清掃などでも、部屋の仕上がりの状態は「こうなっていなければならない」というものがあるのですが、そこに至るプロセスは、行う人によっていろいろ工夫があるんです。「枕を膨らませて置く」ということでも「あの人からはこうしろと言われた」「この人からはこう言われた」ということにもなりがちなんです。仕上がりが同じであればプロセスは工夫次第という面はありますが、動画を見てやり方を知れば、混乱することなく新人でも一定のスピードとクオリティで同じ行動を取れるでしょう。

 

また、たとえば「ホスピタリティとはどういう行いのことか?」だとか「特別な対応ではなく、お客様に〝ちょっといい気分〟になってもらうには?」なんていうことを言葉や文章で伝えるのは、なかなか難しいことです。そこで行動科学マネジメントの考え方にも繋がりますが「皆が再現できるようになること」を目的に、ホスピタリティに関する動画も制作しました(https://www.youtube.com/watch?v=5mbAFSjllL0)。

 

 

行動科学マネジメントは「これひとつをやれば変わる」というものではないと思います。薄い色を塗り重ねていくように、いろんな場面での時間管理の積み重ねが生産性向上につながると思います。行動科学マネジメントはそのための「ツール」です。

 

すぐにできる小さな行動を開始し、積み重ね、それを習慣化するためには、参加者からの報告を見ても、行動科学マネジメントの研修が良いきっかけとなりました。

あとは行動科学マネジメントの「習慣化」のしくみで、取り組みを習慣にすることですね。

 

 

 

株式会社京王プラザホテル

https://www.keioplaza.co.jp/

 

 

「生産性向上」といっても、ただ単に「時間を短縮する。以上」という考えではなく、お客様が必要としているサービスを提供するために、時間を短縮する。お客様への「できること」を増やすために、バックオフィスなどでの自分たちの「やらなくていいこと」を減らすというのは、よりお客様にフォーカスする、ということでもあります。そしてそれが成果=業績にも直結するでしょう。京王プラザホテルの取り組みは、理想的な生産性向上のかたちです。

 

行動科学マネジメント研究所 公認 上席インストラクター 上席コンサルタント 甲畑

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